文科省の不登校・いじめの調査発表について

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文部科学省の「問題行動・不登校調査(2023年度)」が発表されました。かなり前から不登校を問題行動と別扱いにしています。11月1日の全国紙には、不登校といじめを主に取り上げて報じている点は共通しています。
子どもはいつも時代の先を予告してくれます。1970年に「子どものからだがおかしい」と発表したのは、日本体育大学の正木健雄先生のグループでした。1980年代に入り不登校生が増えたのは今日の不登校状況の起点になります。
文科省発表による2023年度の小学生・中学生の不登校生は346452人(前年比47434人:15.9%増)で11年連続増大しています。小中学生の全体数が減少しているなかでの増加です。
子どもの不登校はなくそうとする前に受けとめる——こういうスタンスに社会も変わってきました。不登校の親の相談にも「どういう進路があるのですか?」というのもありました。心配して登校を促すのではなく、受けとめて対応を考えていると思いました。
親個人ではなく、社会もそのようになりつつあります。子どもを(親の思う方向に)どうかするのが中心ではなく、子どもが感じ、表わしている状態から社会を見る方向に親が変わりつつあります。文科省も社会も変わりつつある—と私は受けとめています。
2017年に施行された「義務教育の教育機会確保法」は、不登校の子どもの提示に、社会や国が動いた一つの結果です。近年の校内フリースクールの動きもそうです。これらの動きの全てが肯定的な内容になるとは思いませんが、9月に参加した「中学校の居場所サミット」はすばらしい内容を反映していました。
各地の自治体が、幼児から中学生まで(あるいはそれ以上の世代の)居場所づくりに手を着けています。それは、不登校やひきこもりやさらにその周辺にある生きづらさを感じる子どもたちが求める社会的環境条件をつくる取り組みが必要とされる事態になっているからです。その少年期の明白な証拠が不登校、あるいは高校中退の件数です。

「いじめ」認知件数は732568件(前年比42.1%増)であり、このうち「重大事態」は1306件です。また「ネットいじめ」は24678件(前年比758件)で過去最高です。失敗、間違いには人間として自然なものもあります。むしろそれは積極性の表われです。それを追い込むのではありません。間違いや失敗を隠し、居直り、合理化して継続する——それが社会や人との関係をゆがめます。
とくに「いじめ」認知件数の増大が目につきます。これはいじめを隠蔽(いんぺい)するのではなく、学校として認めて対応する方向にシフトした状態がかなり進んでいることを示しています。それでも隠蔽・見逃し部分に余白はあると見ています。
とくに子どもの行為に関しては、行動性を押さえ込むのではありません。先日、小学生が雨上がりの日の下校時に傘をふり回して路上でチャンバラごっこをしていました。自転車を止めてそれを見ていた私に数人の小学生も動きを止めてしまいました。「けがをしないようにな…」と、うまい言葉が思い浮かばず最適の言葉という自信はないですが、数人から「ハイッ!」という返事がありました。
40年近く前の編集者時代に私が遭遇した「いじめの結果亡くなった中学生の事件」が、「他の生徒の進路にも影響する」と隠蔽されたのと比べると、大きく変わってきたと思わずにおれません。
私が心配するのが「いじめの重大事態」の増加です。2023年度1306件、前年比42.1%増です。40年前のように隠蔽ではないですが、件数が異常に多いと思います。対応は1つずつ数人の専門性の高い人たちが調査して対応する定式ができています。これは2011年の大津いじめ事件のときに原型が確立したと記憶しています。それまでにも何人の子どもが自殺や殺害を受けていたのです。
件数の多さとともに、近年みられる「闇バイト」にまき込まれる若い世代の強盗・暴力・殺人事件につながる、精神的な共通性をどこかで感じるからです。事件を起こす少年あるいは青年にはそれほどの凶悪性は感じられず、ときには偶然性や意図性の軽さを感じるものもあります。共通するのは他者への思いの不足ではないでしょうか。幼児期、小学生・中学生の時期に他人との接触、コミュニケーションの不足・欠如、それらが軽い動機で凶暴な事件をひき起こしてしまう予感をするからです。
子ども時代に学校を含むさまざまな機会が、子どもが自由に自分を表現できる場であること、それによって他者との関係をつくり、人間として成長できる場にできること——それが居場所です。
文科省の調査と発表は、長期間に渡り続けられ、相当に信頼性のおけるものです。それを子どもを上から見下ろしていく指標ではなく、子どもの姿、その表現をする姿として受けとめ、社会と制度を改善している指標にできると考えます。

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