江戸川区平井3丁目でメール便の配達(ポスティング)を担当しています。下町の様子から住宅問題をうかがえる可能性を感じて偶然の機会を生かして就いたものです。家族に関わる住宅問題にどう手を着けることができるのかはまだ明確な道筋は見えませんが、いくつかの材料を利用し始めたところです。
さて私は小学生のころから地理オタク、geographerです。経済学方面は頭を悩ませますが、地理学となると頭を活性化させてくれます。メール便配達の半年を経験したあたりの第一報として地理学的観測をまとめましょう。
平井3丁目は江戸川区の西端にあります。その前にこの「平井・小松川地域」は地理学的に特別の地域と言いたいです。地理学的な詳しい文献とは別に、江戸川区の「都市計画マスタープラン」にある説明を別視点から補足します。
この地は広義の「中の島」に当たり、四方を川で囲まれています。東西どこに向かうにも橋(と鉄道橋)を渡らねばなりません。地理学の中州は河川中の滞留物によりできた島です。しかし、狭義の滞留物でできた島と違うので「中州」ではなく「準中の島」とします。東側の荒川に対して西側の旧中川が流れは少なく、他地域の中州と比べると面積も広いです。「準中の島」の面積は3.349㎢、人口は57660人(2018年)。この「準中の島」が地理学的な特徴の第1です。
だいたい旧中川という川の名前がおかしくはないですか? 元もとは中川(の本体)でした。東京都東部地域は東に江戸川、西に隅田川、中央に荒川が流れ、これは荒川が海に近づく地域のデルタ地帯です。洪水対策として明治-大正期に荒川を大工事により拡幅しました。中川の本体はこの荒川の横に沿って作り直され、そこから枝分かれで残ったのが旧中川となるわけです。
この平井・小松川地域は中州とは違うので勝手に「準中の島」と名づけました。川の沖積地であり、従って平地です。その南側(小松川地域)にやや高い台地がありますが、その台地も平地です。
第2の特徴はこの平地は海抜ゼロメートル地帯です。東京都東部の江戸川区や葛飾区などを含めて、荒川水系がいったん洪水に見舞われるとすれば人口220万人のこの一帯は水没します。小松川第2小学校の校庭は海抜20cmの表示板があります。少し高い位置で校庭横を通るバス通りは校庭から7段の階段を下りた高さで海抜-50cmです。
旧中川沿いは自然堤防的条件により台地状になり、そこから平地のゼロメートル地帯に向かって坂になります。やや急な坂で高低差はたぶん3~4メートルでしょう。私も自転車で登ることができる程度です。近くの保育園の保母さんが5、6人の園児を載せたワゴン車を押しながら登るのをよく見かけます。
東京都東部にあり千葉県に接するこの「準中の島」は両地を結ぶのが主な交通路です。「準中の島」やや北寄りにJR総武線が走り、平井駅があります。南端に地下鉄都営新宿線があり、その東大島駅は旧中川の上にホームがあり、東側改札口が江戸川区、西側改札口が江東区になります。新宿線東大島駅には地下部分はありません。この2本が鉄道です。
幹線道路は「準中の島」の中央部を千葉街道が、総武線の北寄りに蔵前通りが、中央南寄りに高速7号線が東西に走ります。南北を結ぶ幹線の中心は「ゆりの木橋通り」といい、南北の交通は定期バス(都営、京成バス)が走行しています。この東西を結ぶ交通網が第3の特徴といえます。これは人文地理学の範囲です。
北側の平井地域は古くからの住宅地で、京葉工業地帯の一画を示す町工場があちこちにあります。対する南側の小松川地域は比較的新しく開かれた所で、10階以上の高層マンションが林立する住宅地といえます。
平井3丁目はこの「準中の島」の中央西側になります。変形的な長方形で南北400m余、東西500m余、面積は0.25~0.3㎢でしょう。人口密度は1.5~2万人という過密地域です。北側は総武線で区切られ、西側は旧中川のゆるい曲線で江東区と区切られ、東側と南側は直線の道路で区切られています。
平井駅南側に続く商店街が平井3丁目の東端で、商店街の道を挟んで東側に平井4丁目が、商店街は南に伸びて平井2丁目、1丁目と続きます。居酒屋などの飲食店は多いですが、喫茶店は少なくなりました。
古くからの住宅地ですが、西側の旧中川寄りはおそらく宅地開発がすすんでいない地域であったはずで、いまは都営の団地群があります。14号棟まで番号がありますが、建替えなどの関係で実際の団地ビルは9棟です。
北東端が平井駅で、平井3丁目には駅前の21階の準タワーマンションと、中小のマンションとアパートが建ち並んでいます。多くは古くからの一般住宅地です。平井駅北側に29階のタワーマンションが近じか完成します。
緑地は旧中川の川沿いが広い場所で、団地・マンション周辺の児童遊園、やや大きな通りに続く街路樹、人家の植え込み、そして民家に並ぶ鉢・プランターの列です。空地の多くは駐車場に使われています。緑を求める動きと車社会の現実が衝突&調和している姿とみることができます。