家事労働時間から考える

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国立社会保障・人口問題研究所が全国家庭動向調査を発表しています。
2022年の調査では、妻が平日に行う家事時間は平均4時間7分、休日は4時間36分です。これは2008年、2015年の平均4時間40分、休日5時間と比べると短くなっています。
妻にも内訳があって、正規労働者は約3時間、非正規労働者/自営業者は約4時間、専業主婦6時間弱といいます。
同じ調査結果は夫にもあります。夫の平日の家事労働47分、休日1時間21分です。2018年調査以降は夫の家事労働時間は上昇傾向であり、「夫婦の協力による家事労働時間は増えている」と言います。
なかなか貴重な調査であり、現在の家事労働をめぐるいろいろなことがうかがい知れます。
① 家事労働時間は全体として減少している——家電の利用や外部サービスの利用(外食、宅配、クリーニングなど)が増えている。
② 夫と妻の家事分担として、わずかずつ夫の分担が増えている——これには夫婦と子どもで構成される核家族化が働いていると考えられます。
私が調べたのは別のネット上の記事で、家の間取り(個人住宅づくり)や電気料節約などを考えるサイトです。従って、ここは「家事労働」の内容にはふれていません。
問題は家事労働の範囲です。食事(炊事)、掃除・整理(ゴミ出し)、洗濯を中心にしたものが、家事労働と考えられているはずです。とくに食事は欠かせません。
私が大阪にいた1970年のころです。南米ペルーの映画「みどりの壁」というのが上映され見に行きました。若い夫婦と子どもの物語でした。その子が事件か事故で亡くなります。若い夫婦はひどく打ちひしがれていました。夫は怒りに燃え、妻も深く沈んでいました。やがてその若い妻は立ち上がり、食事の準備を始めました。どんな場合でも、食事は欠かせません。このとき何か女性の勁さを感じたことを覚えています。家事はコロナ禍の中でエッセンシャルワークといわれるようになりましたが、昔からそうだったのです。思うに母の姿そのままでした。
他には、家計簿(これはかなり小さい!?)、家具修理、大工仕事、庭作業なども家事かもしれません。そして決定的なのは子育て、介護および看護的な役割がこの調査発表にはありません。同研究所ではこれらも調べているかもしれませんので、探してみる意味はありそうです。
子育ては、とくに乳幼児の養育は、保育所等に預けるとしても、家庭に重要な役割があります。疾病や障害者のいるばあいは、家族の手配りの範囲を越えるにしても、家庭・家族の役割(?)がなくなるわけではありません。高齢者の介護は、状態に大きく左右されますが、高齢者施設に入所したとしても負担がなくなるわけではないでしょう。
家事労働の範囲に、子育て教育、看護、介護を含めて、可能な形で数値化して表現されることを願いたいものです。

この発表とは別に、厚労省は育児休業を設け、父母ともにその取得をすすめています。2020年度の取得率は母が80%以上であり、父は14%ほどで、男性の取得率の低さが示されています。父の育休取得は2025年までに30%という政府目標が掲げられていますが、かなり難しいでしょう。乳幼児に対して、父親がどうかかわるのかはそう簡単ではなく、「非得意分野」の家事に当たるともいえます。
ひきこもりを生み出す背景事情の一端に、社会の歴史的変化とともに、父母の直接的なかかわり方も相応に関係しています。その意味で育児休業制度の効果的な活用をすすめるのは意味があります。そういうことも含めて、子育ては重要な家事労働に入ります。
私の近所(直線距離で100m以内)に2つの保育園と2つの(小規模)幼稚園があります。父親の送り迎えに頻繁にあいます。これは父親の育児参加のほんの一部でしょうが、相当に変わってきたのも確かです。

もう1つは、限定的な範囲で考えられた家事労働時間を、どのように評価するかです。それは生産的な社会的労働の指標GDPにはカウントされていません。社会的な生産・サービスと同一基準が最適とは思えませんが、かといって0(ゼロ)評価にはならないでしょう。
社会的な生産・サービス活動に基づくGDPは、資本主義的社会が確立して相当に過ぎた20世紀に入ってからつくられました。まだ視野に入れられていない家事労働を、どのように加えられるのか——おそらくはポスト資本主義や資本主義に代わる社会では考慮されると思います。

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