(9)就職氷河期世代とひきこもりの関係

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就職氷河期世代の就職、転職、再就職への働きかけをハローワークや若者サポートステーションに行ったときポスターで見かけました。
ひきこもりと近い関係にあると思っていたのですが、先日の学習会(人権と民主主義の教育をめざすネットワーク)で、就職氷河期とひきこもりの関わりがあると説明する発表がありました。
木本喜美子「働くこと、そして生きること——就職氷河期世代の経験から考える」です。木本さんは一橋大学名誉教授で社会学を研究しています。直接のひきこもり研究ではありませんが、深く考える材料を提供してくれました。
2008年の木本さんの聞きとり調査で、大卒、無職・非正規の2人の言葉がありました。
《【男性29歳・無職で求職中】
「公務員試験は面接まで行くが落とされる。定職に就くってことは厳しいんでしょうか。自分が甘いからじゃないですか。まだまだ甘いんですよ、きっと。若いなんて思ってないですよ。ギリギリだと思って焦ってます。必死さに欠けてるんですよ」
【女性32歳・公務臨職、大卒】
「悩みましたね。正職員になれたのにまた臨時(市役所の臨時職員)にもどってしまうのが嫌だったんですが、(仕事が)きつくて。我慢すればできたのかもしれないですけれど甘かったんです。(親からも言われました)」》

木本さんは、これを「自罰的な語り」と言いますし、この「自罰的な語り」をよく聞いたといいます。実は私も同じ種類の言葉を、とくに2000年代の初めには多くきいた記憶があります。
2021年に出版した『ひきこもり国語辞典』でみると、表現はもう少し抑制的・内省的であり、ときに自虐的です。辞典内のあちこちに見られます。この微妙な違いがひきこもりとそうでない人の違いでしょう。気質(先天性)・性格(後天性)が関係すると思います。例えば次の言葉です。
「存在ハラスメント 私がここにいるだけで迷惑をかけているのではないか、そんな気持ちになります。私がここにいてもかまわないのか、周りの人を不快にしていないかと思う感覚があります」
「凡骨(ぽんこつ) 使い古して動きの悪い自動車をぽんこつといいますね。自分はそれと同じです。漢字で書くと凡骨で、「平凡な才能・素質」と辞書にあります。それほど極端に低く落とした表現ではなさそうです」

この2000年初期のことを私は前に、ひきこもり第2波として、1990年代に強まった非正規雇用の増大、就職難、ブラック企業の増大などの影響として書いてきました。就職氷河期世代を、木本さんはこう記しています。

「・1990年代初頭から2000年代半ばに学卒
   大卒:41歳~52歳
   高卒:37歳~48歳
 ・1991年以降:バブル経済崩壊後、長引く不況期=新卒採用手控え
      +加えて、労働市場の規制緩和=非正規化の進行
 ・新卒者が安定した職に就くことができず……非正規or無業……就職困難、生きがたさ、ひきこもり、病気……孤独、孤立
⇒⇒長期間にわたって、過去の経済・社会状態が累積的に影響を与えることになった世代」

ほぼ私のひきこもりの原因に関する問題意識と同じです。違うのは(?)、ひきこもりの初期の発生が高度経済成長期に由来する、という点ではないかと思います(発表の関係で木本さんは省いたのでしょう)。
木本さんはこの調査を(都市圏における調査は既にあるので)「地方圏における若者と仕事・結婚調査から」としています。別の質問者から、これは1995年の経団連の提言による非正規雇用推進との関係があると述べました。木本さんはその点に同意し、別の場で発表予定がある旨を答えました。

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