すれ違い程度の見知らぬ人に声をかけることは少ないでしょう。しかし、声をかけるように心がけています。子づれの親子に「かわいいね」というと、どういうわけか「ありがとうございます」という返事です。動きが多い子には「元気ですね」というと、やはり「ありがとうございます」と返ってきます。子づれには声をかけやすい。
外国人——アジア系の人が多いですが、「どこの国から来ました?」と尋ねる形です。スリランカ、ベトナム、フィリピンが多く、ネパールやカザフスタンという人もいた。多くは工事現場での声かけになります。
コンビニや飲食店の人には、顔なじみ(?)になりやすく、「おはようございます」と、これは日本人であっても同じようにあいさつになる。若い世代の見知らぬ(?)日本人に声をかけるのはほとんどが飲食店の人です。名札をつけていることが多く、外国人では出身地も想像できることがありますが、見当がつかないこともあります。
このなかで今年の例外は夏ごろのことでした。小雨のなか傘なしで、松葉杖をつきカバンを背負って歩く高校生ぐらいの女の子が前を歩いていました。両手が使えず傘をさせず、小雨になったのを見て歩き始めたのでしょう。
どうかと少し迷いましたが、黙ったまま後ろから傘をさしかけて一緒に歩き始めました。一瞬止まってふり返ったので、「大丈夫、一緒に行きますから…」というと、素直に歩き始めてくれました。
およそ200m、人通りのあまりない団地の横をこの形で歩きました。もしかしたら、その子は途中一休みでもしたかったかもしれませんが、そういうわけにもいかず、200メートルほどを強行しました。
ときどき前を通るマンションの前で立ち止まり、「ありがとうございます」とふり向いて頭をさげてくれました。「…じゃあ」と言って、踵を返しました。
知らない人に声をかけられても返事をしないように、ついて行かないように…たぶん保育園や学校ではそんな注意がされていると思います。私のやっていることは、それに背くものかもしれません。保育園や学校での子どもへの注意を非難がましくは言えません。なにしろ世相がそれを必要としているのだから。…でもそういうものばかりではない姿もあっていいのではないか…と思っています。
考えてみれば、あいさつや声かけは、あたり前のことではないか? 少なくとも敵意はない。友好的とまではいかないまでもそこにつながる人間関係のスタート地点だと思います。
私なりには、声をかける相手は親子でいる子ども、外国人が主であって、雨中の女子高校生は例外になります。
銭湯の前で写真を撮る若い男性がいました。「銭湯の写真を集めているんですか」と聞くと答えてくれました。学生で宇都宮から来たそうです。銭湯写真はまだ百カ所は集まっていないらしく、宇都宮に銭湯は1カ所だと言います。人口50万人の宇都宮で1カ所は、にわかに信じられませんが、聞き間違いかもしれません。これも例外のうちの1つです。