相談業務は成長が期待できるサービス産業の1つ ―ひきこもり基本法(案)その3(背景説明)

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私はひきこもり支援策の一環として、官民の相談サービス業務を後押しする公的支援を考えます。財政出動といいたいぐらいです。その代表例として独立開業型の心理相談室を経済成長政策の一部として発展させる提案をします。

相談業務はサービス産業の1構成部分です。職種・職名・資格名、就業形態(個人事業者・企業就業者・公務員)は多く、分野はきわめて広く(医療・保健・福祉・介護・子育て・保育・教育・職業・就職・生活・家族・金融・産業・恋愛結婚・住宅不動産・法律・行政など)、範囲を決めがたく全容はよく把握されていないと感じます。これを提案する論拠は4点あります。

第1は、日本の就業人口の割合全体では、第3次産業(サービス産業)の割合は就業者数で6割以上を占めており、さらに増大傾向にあることです。GDP構成でも6割以上であり、この傾向は先進国に共通します。経済成長政策の中心を土木建設事業からサービス産業に移す必要があります。その中で相談サービス業務を考えるのです。

第2は、相談サービスには、直面する課題が深刻であり日本的な困難さを持つものがあり、その1つが精神心理相談です。人々の自己評価の低さ、抑制的な表現になる日本的な困難がよく表われています。社会的病理の表われとなるひきこもりはその典型です。相談業務は相談室ワークにとどまらず、さまざまな実践的行動を伴うことも少なくありません。先進国共通課題と日本的困難の両方に取り組んでいます。

第3は、ひきこもりには子育て、家族関係、介護、人間関係、社会参加・行動の不安感、孤立・孤独などに近接する領域にあります。ひきこもりへの対応は、病理的領域と生理的領域の双方に関わる役割をもちます。そこでの成果を挙げることは近接領域への対応全般に影響するものとみられます。

第4は、サービス産業としての心理相談業の後押しは、日本の産業創出の一部を構成します。現在その規模がどの程度(人数・所得など)になっているのかは、必ずしも明確ではありませんが、日々拡張していること(成長分野)は確かです。

松江英夫『「脱・自前」の日本成長戦略』(新潮新書、2022年)では、日本が経済発展に進む4つのカギを握る産業創出分野の第一に「医療・健康」を挙げています。他は「環境・エネルギー」・「災害対策」・「教育」であり、いわゆる大規模な土木建設事業が中心ではありません。この4つの産業創出分野は「内容の継続性と課題の深刻さ」が共通するもので、「継続的な代替需要が生み出され…新たな産業や雇用につながり」「解決策が生み出されれば、そのソリューションを広く海外に輸出が期待できる」(p162)とまで述べています。

ひきこもりとその相談分野は、末端の一社会問題というよりは、社会問題解決の先端部分として取り組む意味があります。そういう意味で、困難をもつ人への個別支援とともに長期低迷という日本社会の社会的病理を復興させる視点からもとらえられる課題になります。

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