都内のIT関連の会社がひきこもり経験者の雇用を進めているとのTV放映がありました。連絡をして数日後に関心をもつ当事者5人ほどで同社を見学させてもらいました。いい企業ができたとの感想が第一ですが、そのとき気づいたことが別に1つありました。
同社はある精神科医に委託して当事者の医学的診断を求めていると案内書に書かれています。その医師は「ひきこもりを診断するのではなく、精神科的疾患の有無を診断する」旨を記していました。医師としては率直な表示と思います。医師にはひきこもりを診断できないのではありませんが、それは当事者(受診者)の生活・行動状態を知ったうえで診断になるでしょうが、その条件を持つ医師が多くはないと思えます。では誰が判断するのでしょうか(診断ではなく判断とか認定)。
その点を考えて、葛飾区で活動していた当時、区長宛に要請をしたことがあります(処理は区長室室長)。実際にひきこもり(と思える人)に継続して関わっている人が、判断・認定するのがいい、という主旨です。それには特に回答はありませんでしたが、福祉部門の数人の人と話し合う席を設けていただきました。誰が判断・認定するかに左右される実際的なケースがなく、目的が明確でないこともあり、その回答を得ないまま時間がすぎました。
2019年に江戸川区でひきこもりへの大規模な調査が行われました。厚労省の「ひきこもり認定基準」を示したうえで、調査をした人と受けとった人が「ひきこもり」を判断し、アンケートに回答しました。調査する人(民生委員など福祉担当者)には一応のレクチャーの機会はあったと思いますが、回答の多くは、送付を受けた世帯の人です。回答者には特に期間6か月が意識されなかったと思います。結果として「ひきこもり」の範囲は拡大されてカウントされました。※これは必ずしもまずいわけではありません(念のために言っておきます)。
これらの経験は、誰がひきこもりを認定するのかを考える材料になります。対象者の生活・行動状態を少なくとも半年以上継続的に知る立場にあり、行動面・心理面を知る条件のある人が該当すると思います。このうち心理面は一般家庭の人に求めるのは難しいと考えます。
しかし問題はさらにあります。家から一歩も出ない、自室からあまり出ない、同居する家族ともあまり顔を合わせない状態の人もいます。このなかには、同居する家族が自宅にいないときを見計って外出するタイプもいますからさらに複雑です。それでも行動面や生活面については、家族が判断することは可能なこともあるでしょう。
こうして誰がひきこもりを認定するのか問題の「解」に近づきます。ひきこもり等の居場所、相談機関(医療、心理、福祉を含む)の運営者。継続的に家族の相談を受けている人で、家族の話によってそのひきこもり的家族の様子を知ることになる人。訪問活動(訪問サポートをくり返す人だけではなく、民生委員、福祉職員、保健師などを含む)により継続的に生活、行動状態を知る人というのが「解」になると思います。
「ひきこもり」を公式に定義し、その研修を終えたこれらの人を、「ひきこもり」認定資格者とするのを私の考えとして提案します。
不登校の認定者は、その生徒が在籍する学校長になっています。こちらはシンプルです。