散髪のため床屋さんに行くのは、ひきこもりにとっては、一大イベントになります。そのイベントを避けるため“自刈り”とでもいうべき自分で散髪できる“技能者”も生まれていますが、それは少数です。
長い髪をしていると、その外観で社会性を疑われることがあるので避けたい。そこで年1回か2回は床屋さんへ出かける一大決心をします。ハードルは外出、そのための気力・体力にとどまりません。人によっては電車に乗ることもそうです。
そして最大の難関は床屋での会話にあります。会話はほとんど何も言わずに「耳のところまで?」「七三で?」と短く聞いてくれる人にはうなずくだけでいいのです。「今日は休みですか?」「どんな仕事を?」と尋ねてくる人、最近のニュースなんかを織りまぜてくると、途中で逃げ出したいこともあります。ここが難問です。このやりとりを想像すると散髪は何とか避けたい、という気持ちになるのです。
どうやら女性のひきこもりも美容院に行くとき似た心理状況になる人がいるようです。