葛飾区教育委員会が策定した「学校支援総合対策事業」を見る機会がありました。
区内には30日欠席基準の不登校生が353人います。この事業計画では、その出現率を4年後の2019年度まで毎年減少させ、適応指導教室の利用者を現状の40名から80名に利用できるように目指しています。不登校生の縮小対策と言えるものです。
具体的な方法は、①教育支援センターの整備、②拠点教室の拡充検討、③訪問型学校復帰支援、の3点が重点施策です。一般の小学校・中学校における不登校対策は見当たりません。
学校は微動だにせず子どもが学校に来るようにする取り組みです。不登校の子どもが提起していることは、これほど受けとめられていないのか。いまに始まったことではありませんが、唖然とするほどです。
過去30年の間には、適応指導教室ができました。大検資格が高卒認定資格になりました。高校卒業に必要な単位数が減少し夜間定時制も3年で卒業できるようになりました。昼間定時制高校もできました。夜間中学には不登校のまま中学校を卒業した生徒が入学できるようになりました。そのほかいろいろありますが高校中心で、小学校・中学校および高校の中核部分は変わりません。私はその部分を「微動だにせず」と表現しました。
不登校の問題の解決・解消とは、不登校の子どもがすべて学校に通い始めることによって実現するとは思えません。子どもの自立過程が現在の学校制度だけで保障されるのではなく、子どもと家庭、社会の状況に応じて多様に用意されることです。不登校の子どもが行為・行動で表していることは現状の学校への改善要求です。
学校側の、文科省や教育委員会の不登校対策にはそういう視点が全く感じられないのは驚くべきことです。不登校の原因は家庭・家族にある、本人の性格・気質にある…から学校としての対応策はないという意思を感じます。学校外の教育施策をすすめるのです。
私はこれを硬直的に言うつもりはありません。学校単独にはできないことは多いからです。それにしても、子どもの提起していること、民間で生まれている事態にあまりにも鈍感なスタンスはあきれるほどです。
上の3つの重点施策を民間で生まれていることに当てはめれば、教育支援センターはフリースクールの、訪問型学校復帰とはメンタルフレンドを指すのでしょう。拠点教室の拡充とは区内に1カ所の教育支援センターを複数にするということでしょう。それは認めていいのです。肝心の小学校はどうするのか、中学校はどうするのか、それがありません。
不登校の子どもは学校で得ることがなく不登校になっているのに、小学校・中学校における不登校対策はない。これが「微動だにせず」の意味です。学校は空洞化していませんか。学習面は進学塾や補習塾に任せ、生きた友人関係づくりや社会を学ぶ機会は担任教師任せになっている。「学校支援総合対策事業」を見て思うのは、書かれていることよりも書かれていないことの重要性です。
以前にこの点を書いたものがありますので、2点紹介します。
◎不登校・引きこもりの解決とは社会にある問題全体の解決に重なる(2014年1月27日)
http://www.futoko.info/…/%E4%B8%8D%E7%99%BB%E6%A0%A1%E3%83%…
◎不登校問題はいつまで続くのか(2012年12月17日)
http://www.futoko.info/…/%E4%B8%8D%E7%99%BB%E6%A0%A1%E5%95…/