ひきこもりへの直接の支援活動として相談、訪問、居場所が不登校情報センターの取り組みになります。
それなりのことは続けてきていますが、乗り越える壁はあります。
8月の「大人の引きこもりを考える教室」(10日)では、その点が話されました。2人の例から紹介しましょう。
30代の男性Aさんです。いまは父との関係、母との関係は改善されています。もともと大人しくやさしい子どもでした。編集や校正に関心があるらしく、前に校正を習ったこともあります。
私は、編集を前職としており先月お母さんが来られたときに「校正を手伝ってほしい。それを話してみたらどうですか」と提案しました。
今回、出席されたお母さんからの報告は「どういうタイミングで、どう話せばいいのかつかめなくて、まだ話していません」ということでした。その話を持ち出すことが、いまの平穏な関係を崩すかもしれない不安があるのです。
出席した元ひきこもり経験者の話は「居場所にくるように勧めるのが本人の気持ちとは違うのではないか」といいます。
Aさんは以前に父親に頼んで1年間の仕事についたことがあります。あまり意にそぐわなかった仕事らしいのですが、父親に頼んだこともあって1年はそこに勤めたのです。義理堅い面もありますが、Aさんが動いたのはそれが居場所ではなく本人はできそうな仕事を望んだからでしょう。
居場所は仕事以前です。Aさんは自分を引きこもりとは思っていないのではないか、居場所に行くような者ではないと思っているのではないか。
そういう状況をお母さんは感じ、そこが躊躇の背景にもあると思えました。
Aさんには就職ではなくても仕事の依頼のほうがいい。居場所に行くのはAさんの望んでいることとは違う。そう考えてAさんの関心のある編集の周辺にある仕事を確認して提案することになりました。
一般には長期の引きこもり状態の人には居場所での経験をするように勧めます。けれども本人が引きこもりとは思っていない場合などは、また違うのです。