引きこもりの高年齢化による対応の難しさが指摘されています。
ごく大まかに、(1)居場所に行けるようになること(外出プラスα)、その先に(2)社会参加になることの2段階があると考えてきました。そのうち居場所について気づいたことを少し書きましょう。
引きこもり状態の人、とりわけ20代後半以上で10年以上の引きこもりを重ねた人が医療機関や居場所などに行けるようになっている人は数%にすぎないと推測します。
家族を含めても10%を超えてはいないのではないでしょうか。そういうわけですから居場所にくる引きこもり経験者は居場所にとっても貴重なのです。
引きこもり経験者の集まる居場所は「同じような体験をした人なので理解しあえる」と称しています。ところが実際に行ってみると、表面的には穏やかそうであっても強い感情の空気が激しくぶつかる“修羅場”です。違和感いっぱいで「ここは自分の来る場所ではない」と逃げ出したくなります。誰かがアウェイ感とうまく言い表しました。
アウェイ感いっぱいになるのはわかりますが、その主因は居場所に初めての引きこもり経験者にあります。3歳の子どもが母親と離れて人ごみの中に置かれたときの不安感と似た状況になるのです。
だから初めての居場所で何かをしなくてもいいのです。静かに座っているだけで十分にそのときの課題に取り組んでいるのです。こういうことを何回か繰り返します。そのうちにようやく周りが少しずつ見えてきます。
落ち着いたところで、自分にできることを始めましょう。誰かが話しかけてきたり、何かをしようといってくることもあります。少しほっとします。ただできないことに無理に取り組むことはありません。できそうなことに手を出せばいいのです。この何かに手が出せるまでに数回の居場所通い、または数か月かかる人もいます。
ここまでに自分の心身状況に多少の変化があります。特に睡眠に影響が出るかもしれません。ぐったり疲れるとか、逆に軽い興奮状態で眠れなくなる人がいるかもしれません。食事への影響やうつ状態になったりすることもあります。自分の体調を自分で感じながら生活ペースを整えます。急がずに時間をかけてどんな生活状態なら居場所にいけるかを自己観察することです。
居場所に少しなじむ時期になります。それでもアウェイ感はつづきます。居場所を自分仕様にする課題がでます。パソコンを自分の使いやすいようにすることをカスタマイズと言いますが、自分用の居場所にカスタマイズを試みるのです。
居場所に行く時間はその頃にはだいたい決まっているでしょう。それもカスタマイズの1つです。座る場所やよく使うパソコンなどの道具を可能な範囲で自分ペースにすることです。このような条件づくりをするだけでかなりの経験を重ねています。先の心配はもっともですが一つひとつを着実に進むことをおすすめします。一気に追いつこうとするとまたゼロ状態に戻ります。