大人の引きこもりを考える教室に参加していた引きこもり経験者の感想を紹介しましょう。
親が堪忍袋の緒が切れた様子で引きこもりの娘に当たったようです。食事は自分で作らない、掃除・洗濯もしない、そういうのを怒って、自分で買い物をして自分で食事の用意をしてみなさい、というようなことだったとしましょう(この事情はちょっと変えています)。
娘さんからの反応は意外なものでした。
食事の準備をする段取りができない、といってきたのです。
買い物に行くこともたいへんでした。近くのお店に行くのに2時間かけて外出準備をしたのです。いったいどこに出かけるのかというほどの正装でした。
娘さんの心身の状態はこのようなものであったのです。それがようやく表面化し、親にもわかったのです。食事の準備といってもそのためのいろいろなことができない、家の外に出ることは荒野に乗り出すような決心と装備がいる、それが完全正装なのです。
ここで起きたことは、親が本音をぶつけてきた点です。それに対して引きこもっていた娘さんが自分の事実を糊塗しないで表したのです。親はこれまで娘さんの現実を知らないできたとも言えるわけです。子どもに向き合うとは本音で向き合うことであって、平穏自体を求めるのとは違います。もちろんこれで娘さんの状態全部がわかったとはいえませんが…。
本音を言い合う親子関係があればここまで娘さんの引きこもり状態が続かなかったのかもしれません。かといって親が怒るとか攻撃する形の本音表現がいいわけではありません。落ち着いたなかで互いに本音で語り合える関係になることが事態を改善するのに有効でしょう。それを堪忍袋の緒が切れた形でできたのです。
これを聞いて感想を口にした当事者には、自分の経験にも思い当たる節があるようです。参考になる話です。