東京都発達障害者支援センターTOSCAの支援者育成講座に参加いたしました(12月5日)。
事例報告「社会参加が困難な人へのかかわり」を聞きました。
TOSCAでは相談事業をしながら、3年前から当事者向けのミニワークも行っています。週2回で参加者は7名ほど。そのなかでの生まれていることが報告内容です。30代のアスペルガー障害者Aさんへの対応実例が発表されました。Aさんが対人関係において問題にする相手の事情を支援者が相手に代わって説明しない点を「ニュートラルな」スタンスで受けとめる重要性を話しました。支援者が代理説明するとAさんは支援者を相手の代弁者に受けとめてしまい、支援者との関係がうまく成り立たない実感を話しました。これにはAさんの言うことを軽く受け流さない、などいくつかの状況や事例も含まれています。
実はこれは私が実感していることと同じです。私はこれを長い間あまり意識をしないでやってきたように思います。カウンセラーのIさんは「松田さんは松田さんでいいんですよ」といいましたが、たぶんこのあたりのことを指しているのだと思います。
少年時代から私はこの感覚を“公平”ということでやってきたと思います。不登校情報センターを始めて数年したあたりからは「それはその人にとっての真実」という理解のしかたで当事者の言い分を受けとめようとしてきました。
そうなったのはこんな“事件”をいくつか経験したからです。
「ひきこもりの子どもと話をするとき、私は親側の代弁者の役割も兼ねています。子どもの見方70%、親の見方20%ぐらいでしょうか。
ところが、この姿勢は子ども側からはとても強い反発を受けます。「親の肩をもっている」と激しく責められたこともあります」(『ひきこもり 当事者と家族の出口』子どもの未来社、2006年、149ページ)。
支援者は親や周りの人との仲介役になる前に当事者の味方でなくてはならないのです。その結果が「それはその人にとっての真実」という理解でなければできないと思ったわけです。
私が“公平”という自然感覚に重ねて“当事者の味方”を置くようになったのはこれらの経験によります。Iさんにはそれが私の自然状態に見えたのではないでしょうか。TOSCAの発表者はそれを言葉で表現してくれました。
そういう支援者へのスタンスも含めて、そしてミニワークとして展開しているTOSCAの実例は、不登校情報センターにおいても展開していることです。
講座を終えた帰りに一緒に参加した藤原宏美さんがこういいました。「トカネットの訪問活動も含めて不登校情報センターのやっていることはTOSCAと同じじゃないですか。不登校情報センターは意外と進んでいますね」。
おおよそその通りだと思います。トカネットの訪問サポートはTOSCAを超えている活動ですが、就業に結びつける系統性がないのが不登校情報センターの不足です。それに代わって不登校情報センターには居場所の基地として当事者の仕事づくりがあり、その程度によってはいい線をいくかもしれません。TOSCAのミニワークと不登校情報センターのサイト制作を対比すれば似たようなものかもしれません。しかし、満足できない状態であることもまた確かです。