Tさんからリハビリセンターの様子を聞く機会があります。
そこでは交通事故の後遺症によるリハビリが多いようです。
脳の機能障害をみるところもあります。
ここの様子を聞くわけですが、実はどんなことかはよくわかりません。
むしろそれらの状況を話すTさんの変化や機能回復のために取り組んでいる漢字や書き取りの学習が事態を感じさせてくれます。
それとは直接は関係ないのですが、私は昨年来、脳と神経系に関する文献をいくつか読みました。
いずれも古い本です。
それらが予行練習になり、「小岩特別支援学校・全国発表会」での講演を聴きました。
講演者は「神経心理学の視点からとらえるコミュニケーションの指導」と題する坂爪一幸先生です。
講演においては最近の研究成果が現れています。
そのなかで特に印象的なのは成人の高次脳機能障害の治療の成果を子どもの発達障害の教育活動に生かそうという視点です。坂爪先生が言うには両者の間には20年の差があるといいます。
その高次脳機能障害の「さまざまな技法の開発・発展」として次の例が紹介されました。
・各高次脳機能障害の回復の技法―失語症、半側無視、記憶障害、注意障害、遂行機能障害の回復技法など。
・特定行動の形成と除去の技法―オペラント法、モデリング法。
・自己の監視と制御の技法―自己教示法、自己監視法、自己強化など。
・獲得の効率化・定着化の技法―全習・分習法、集中・分散学習法、シェービング法、背向型学習法、時隔的検索法、無誤謬学習法、手がかり漸減法など。
これはパワーポイントに個条書きされたものです。
なんとなく想像できるものもありますが、技法となるとどれ一つとしてよくわかりません。
私がそれらに立ち入ってわかる必要はないと思いますが、何かの折に触れることもあるでしょう。
これらの知見や技法を子どもの発達障害に応用できないかを提起されたわけです。
Tさんの様子からわかることは、これらの技法は華々しくはなく地味なものです。
それを日常的に継続することが機能回復訓練であり、また教育活動になります。
坂爪一幸先生の紹介された技法の多くはそのようなものだと思います。
劇的な効果を求めるのではなくこうした活動が大事であると思います。